磁石
裕也、
私、最近、に始まったことじゃないけれど、
裕也のいない世界に取り残されてから、
どっちが現実なのか分からないんだよね。
裕也がいない世界は、地に足がつかないまま、浮遊してる感じがする。
昨年の今頃、何していたか、はっきり思い出せない。
裕也と過ごした時間は、鮮やかで、眩しくて、生き生きと記憶しているのに。
人間にもね、磁石のように、
N極とS極があると思うの。
裕也と私は、譲れない部分とか芯は似ているのに、全く違う性格をしていたから。
まさに、N極とS極だと思う。
だから、どんなに私が突き放しても、
2、3日、
あるいは、
1週間、
もしくは、
次会えば、必ずくっついた。
離れていることに耐えられなくなる。
そんな時がやってくる。
そんな日々が続いていた。
でも、磁石は1つだけだと、
ただの物体に過ぎなくて。
何者かも分からない存在で。
なんて、考えると、涙が溢れてくるよ。
でも、自分がどうして泣いているのか、
何に向かって泣いているのか、
自分でも分からないの。
なんで、泣くんだろう。
嗚咽しながら。
今が夢で、
いつか目を覚ませば、
また裕也と普通に過ごしている、
そんな気がするくらい、
現実の方が現実味がないよ。
本当に。